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1996-11-06 [J] [長年日記]

No.12 質より量

「質より量」というと、ちょっと違うかもしれないが、最近の消費者というのはその傾向が強い。家電製品を買うときなどはそれがもっとも顕著であろう。専門家がいて、親切に応対し、説明してくれるけど、ちょっと値段が高い店と、箱が山積みになって、バイトの何も知らない兄ちゃんが店員の、値段が安い店なら、迷わず安い方で買う。これは、消費者が、非情な買い方をしていて、街の電気屋さんがかわいそうだ、とよくいわれるが、果たしてそうだろうか?

現在の消費者にとって、電子レンジに対する十分すぎる説明が必要だろうか?もちろん必要な人もいるだろうけど、基本的にその需要は明らかに減ってきている。消費者も賢くなっていて、カタログでしっかり吟味して、安い店を探すという行動に出ている。それは、べつに身勝手な行為ではない。本当に説明が必要ないんだから。もちろん、ちょっと高い店でさんざん説明を聞いといて、安い店で買うという計画は言語道断だが。

電気屋さんの方もそこらへんをよく理解するべきであろう。説明要員があまるのなら、説明を必要としている市場に移ればよい。たとえば、今のパソコン市場がそうである。以前のようにマニアだけのものではなくなり、信じられないような素人が買いにくる時代である。安く叩き売るのも商売だが、真心込めてサービスをするという上では、現在もっともニーズがある市場のはずである。パソコンの勉強をする必要があるが、それぐらいの企業努力はするべきだろう。

いずれにせよ、このへんの見極めの差が、今の秋葉原の盛衰劇を物語っている。全体的に「質より量」の時代に向かっていても、新しく出てくる産業やブームには、必ず「量より質」のニーズがある。一般化するまでの勝負なんだけれども。