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1996-11-07 [J] [長年日記]

No.13 ゴミ捨て場

山はゴミ捨て場らしい。

神奈川県は県内すべての林道において、一般車(マイカー)の乗り入れを禁止した。気軽に山の奥へ入れないようにしようというものだ。せっかく、RVブームでみなさん高性能な車を買ったというのに気の毒なことだが、車の性能の向上にしたがい、マイカーが乗り入れてくるようになって、比例してゴミも増えたんだから、そこに因果関係を見出そうとするのは至極当然のことである。もちろん、乗り入れてくるすべての人が良識のない人ではないことは分かっているので、その人たちは非常に迷惑であろう。

俗にこれを「俗化して荒らされる」と言うんだろうが(言わないか)、なぜ物事というのは一般化するにつれて、低俗化していくんだろうか。

渋谷なんて完全なゴミ捨て場だ。明け方の渋谷センター街の路上といったら凄まじいものである。日本の流行の最先端だそうだが、低俗さでも最先端というのは、単なる偶然だろうか。いや、流行の最先端という表現がいけない。最先端に群がる人々が最も多い街であると言わないと、良識あるクリエイターたちの気を悪くする。

世にある、マーケティング戦略というのは、特にソフトウェア関係(コンピュータのソフトは除外。サービス、ブランド、音楽、ゲームなど)では、そういった意味で、ゴミ捨て場作りに他ならない気がする。売れる=一般化する=低俗化する、ということを承知の上で売るわけだから。昔は作り手がそのギャップに悩んできたものなんだが、最近は作り手がマーケティングにまで手を染めることも多くなってきていて、低俗化するという意識があまりないみたい。

すでに低俗化しきっている分野では、なかなか、その低俗化へ至る過程が見えてこないが、いままで低俗化していなかった領域が犯されつつあるのを目の当たりにすると、はっと気づかされる。

山が本当にゴミ捨て場になってしまう前に、世界中がゴミ捨て場にならないように、ちょっとは考えなくっちゃいけないのかもしれない。