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1996-10-30 [J] [長年日記]

No.5 立ち読みは犯罪か?

私は立ち読み愛好家である。要するに本屋の敵なのだが、立ち読みというのはどれくらい悪いことなんであろうか。

正論を言ってしまうと、情報泥棒といえるので立派な犯罪である。もちろんそれを取り締まる法律はないから検挙されるようなことはないが、罪悪感を感じるべきである。私などは「10冊分読んだら1冊は買う」というふうに、少しは償いをしているつもりである(完全な自己満足)。

でも、もし誰も立ち読みをしていない本屋があったとすると(小さな本屋でおやじが目を光らしているようなところは本当にだれも立ち読みをしていないが)、たぶん普通の人は気軽に入れない。私のような立ち読み魔はそれこそ絶対にそういう本屋には近づかない。でも、ある程度立ち読みをしている人がいると、気軽に入れるものである。そう考えると、立ち読みをしている人はその店の宣伝を担っていることにもなる。もちろん大きな本屋はそのことをわかっているので、咎めるようなことをしないのだが。

この点は、キセルなどの不正行為とは一線を画す。キセルは、どう考えても鉄道会社に利益を及ぼさない。でも、立ち読みは何かしら本屋にいい影響を与える。もちろん本屋としては、すべてのお客が、読む本に対してお金を払ってくれればそれにこした事はないし、立ち読みする側だって、情報泥棒をしているという自覚は持つべきなのは当然のことである。このへんは微妙なバランスの上で成り立っていて、どっちに転んでもあまりいいことはなさそうである。たとえば、みんなが本を必ず買うようになったらゴミ問題がもっと深刻になるかもしれないし、立ち読みによって得られる雑学が乏しくなって生活に潤いがなくなるかもしれない。逆にみんなが本を買わなくなれば、本屋がつぶれ、結局本が読めなくなる。

結論から言ってしまえば、現状では立ち読みという行為は本屋さんの潤滑剤になっているといえる。しかし忘れてはいけないのは、立ち読みという行為そのものは知的所有権の侵害だし、本屋さんに対する裏切りであるということだ。われわれが立ち読みできるのはそこに本屋さんがあるからだということは忘れてはいけない。結果的に立ち読みに終わってしまうとしても、本屋さんには「本を買う」ことを目的に出向きたいものである。